第15章 どなたでしょうか
「コノハ〜、そこにあるカゴ持ってきてくれるかな?」
自分の名を呼ぶ声がキッチンから聞こえる。
「はーい、今取るね、お父さん!」
…そうだ、この声はお父さんだ。
お父さん…?
あれ、どうしてお父さんが家にいるんだろう。
「おーい?どうした?そんな顔をして。」
暖かい手が頭を撫でる。
あぁやっぱり、お父さんの手だ。
「ううん、なんもないよ!ここにカゴ置いておくね。」
「ありがとう。さっ!コノハの為に沢山作ったよ!これをカゴに入れ終わったらみんなでピクニックだ!お母さんを呼んできて!」
そっか、夢の中だからお母さんもいるのか。
「お母さ〜ん!」
夢…
そうだ、これは夢……
どうして気が付かなかったんだろう。
お父さんもお母さんも既に……
「は〜い!ってコノハ?どうしてここにいるの?」
「どうして……」
喉が詰まってその先の言葉が紡げない。
それに涙で視界もぼやける。
「もうお父さんったら、ピクニックなんてしてる場合じゃないのに。コノハ?愛する人は見つけたようね。ふふ、行ってらっしゃい。」
嫌だお母さん…まだ2人といたいよ……
それに愛する人なんて見つけてないよ…
声が…出せない……
「さぁ、行ってらっしゃい。」
ぎゅっと抱き締められたのはほんの一瞬で。
優しい手が肩をトンと押し、体が後ろに倒れていく。
お母さん…お父さん…
重い瞼を開けるとその瞳には白い天井が映し出される。
「ん…」
なんだか長い間眠っていたような気がする。
それに誰だろう…誰かが私の名前を呼んでいる…
「コノハーーーーーっ!!!!!!」
起きあがろうとしていた体が、大きい何かに包み込まれベッドに沈む。
「は、はははははは早くキャプテン!」
「お前がパニックになってどうすんだよ!おい!誰かキャプテン呼んだこい!」
「おおおおお、おお、俺が呼んでくるわ!」
「コノハ…っ!良かった!!」
ドタバタと忙しなくなる部屋。
その忙しなさにコノハは目を見開くことしかできなかった。