第15章 どなたでしょうか
幸いコノハの体には目立った外傷はそこまで無かった。
争ったであろうその際についた傷…くらい。
だが、それはあくまで外傷の話。
「守ってやれなくて…悪かった……。」
あの時、俺がお前から離れなければ…
いや、そもそもこの島に上陸しなければ…
「クソ…」
コノハが強姦されたのは一目瞭然だった。
部屋に漂う青臭い匂い、コノハの太腿から伝う精液と血の跡。
無理矢理挿入されたのだろう、膣内には裂傷がいくつも確認できた。
あの忌々しいヤツの精液は能力で取り除いたが、それも100%じゃない…
怖かっただろう。
眉間に皺を刻んだローが綺麗な栗毛色の髪をそっと撫でる。
「コノハ……」
花火だって、見せてやれなかった。
あんなに楽しみにしていたというのに。
コイツのことを何一つとして守ってやれなかった。
「悪かった………」
心臓が抉られるように痛み、後悔の念だけが押し寄せる。
それでもお前は…
『アンタの女が…アンタの女が、俺の仲間を気絶させたんだ…!』
その手の力で自分を守ろうと、1人でなんとかしようと必死にもがいたんだな。
『殺してやるとそれだけ言って、覆い被さってたアイツの首を…』
どうにか掴んだ。
それで恐らく願おうとしたのだろう。
「でもお前は命を奪うような事はしなかった…そうだろ…?」
返事の無いその体をぎゅっと抱き締める。
あの男が言うには、襲われている間もコノハはずっと泣き叫び続けていたらしい。
永遠と泣き続け、男が全てを出し切った瞬間隙をつき縛られた手で男の首を掴んだのだと。
さっきまで泣き続けていた筈だったのに、首に手をかけるコノハの表情は『無』そのものだったそうだ。
だが、何かがコノハの理性を繋ぎ止めた。
首に手を掛けられていた男はその場に倒れ、コノハが近くにいた男の腕を掴んだ瞬間、そのもう1人も倒れたのだと。
「…何がお前を繋ぎ止めたんだろうな……」
その答えも今は聞くことが出来ない。