第14章 あの人だけのものだから
ズキズキと痛む下半身が、薄れていた意識を覚醒させていく。
「ん…」
重い瞼を上げると背中には温かいぬくもり。
体には逞しい腕が巻かれていた。
「ふぅ。」
あぁ、そういえばあの後…休む事なく抱かれ続け、気付けば意識を飛ばしていたんだっけ。
おぼろげな記憶を辿っていると、ある事を思い出した。
「今何時…!!」
少し荒げた声に反応し、お腹に回された腕に力が入る。
「ロー、起きて!ちょっとこの腕離してもらえる!?」
「……何故だ。」
睡眠を邪魔されたのが不服なのだろう。
顔を見なくても声だけで機嫌が良くないことが伺える。
「え、っと、今何時か確認したくて…!花火間に合うかなぁって!」
ローの機嫌はひとまず置いといて…
初めて見る花火を見逃すまいと今日は早起きしたのだ。
間に合わなかったら立ち直れない。
「花火ならもう終わっている。」
「はっ!?」
雷に打たれたような衝撃が体に走る。
誰か嘘って言って…
「う、そ…」
結構ショックだ。
ポロポロと涙が溢れてくる。
流れる涙を拭い上げようとした時、肩をぐいっと引っ張られた。
とすんと背中がベッドに沈み、上からローが顔を覗かせる。
「…そんなに見たかったのか?」
眉間に皺を寄せていても、いつもとは少し違う表情。
この顔は、心配してくれている時の顔だ。
「う、ん…見たこと無かったから…」
なんて私は弱いのだろう。
こう話している今も涙が止まらない。
「っ…、悪かった。俺が何度も抱いたばかりに…」
指の腹で涙を拭われ、バツが悪そうな顔をしたローと目が合う。
「ぐすん、ローのせいじゃない。ちゃんと言わなかった私が悪いし…」
花火は見たかったけれど、きちんと伝えなかった自分に落ち度がある。
ローが謝る必要はないのだ。
「…ちょっと待ってろ。」
そう言ってローは頭を優しく撫で、ベッドから降りる。
何をするのかと目で追っていれば、脱ぎ捨てられた海パンのポケットをごそごそと漁り出した。