第14章 あの人だけのものだから
乱れたシーツに腰を下ろすと、ベッドのスプリングがギシリと軋む。
死の外科医なんて呼ばれているが、今目の前にいるローの姿はそんな異名とは随分かけ離れている。
だってそうでしょ?
こんなにも可愛い顔で寝ているのだから…
コノハの指が頬をツンと突く。
すると伏されている瞼がピクリと動いた。
(起きちゃった…?)
一瞬手を引っ込めるも、ローは未だ眠ったまま。
眠りの浅いローにもっと寝て欲しいだなんて思っておきながら、こうしてちょっかいをかけるのはどうかと思う。
だけども気持ちが溢れて自分でさえどうしていいか分からないのだ。
早く起きて欲しい気持ちと体を休めて欲しい気持ち…
可愛いらしい寝顔を見ながら葛藤していると、その目はゆっくりと開いた。
「あっ、ローおはよう!」
心待ちにしていた瞬間に頬が緩む。
「…あぁ。」
掠れた声で返事をされ、ローの頭が太ももに乗った。
(甘えてる……?)
ローが甘えてくる事は中々ない。
この機会を逃すまいとコノハが頭を撫でる。
まるで大きいネコ…
喉元まで来た言葉をぐっと飲み込み、癖のある髪を撫でているとローがこちらを見上げた。
「何をニヤついている。」
あらら、どうやら隠せていなかったみたいだ。
「えっと…なんかローが可愛くて。」
「あぁ?」
本音を言えば、ローは怪訝な目つきでこちらを睨んだ。
「だって、そんな怖い顔しているのにやっている事が可愛すぎるんだもん…」
クールなキャプテンが膝の上に頭を預ける姿など誰が想像できるというのか。
ギャップがあるにも程がある。
「他の人にはしないでね…?」
ただでさえローは格好良い。
それに加え、こんなことをされたら誰だって惚れてしまうだろう。
「クク…俺を独占したいってワケか。」
独占…
できるものならしたい。
ワガママだとは思いつつも否定など出来なくて、控えめに小さく頷く。
(可愛いヤツだ。)
たまにコノハが見せる嫉妬や独占欲に、ローは優越感すら感じている。
「安心しろ。俺はお前以外に興味無ェ。」
だからお前もずっと俺を見続けていてくれ。
薄い腹にキスを落とすと、コノハはくすぐったそうに体を捩らせた。