第14章 あの人だけのものだから
「それじゃ…」
「「「カンパーイ!!!」」」
威勢の良い声と共に高らかにジョッキを掲げるのは、三ヶ月ぶりの陸地に胸を踊らせるハートの海賊団。
ここマイツリ島では気候ゆえか、屋外で酒を飲める酒場が至る所に点在する。
陽が傾き、暑さも少し落ち着いてきたのでたまには外で飲もうとペンギンが言い出し、全員がそれに賛成し今に至る。
コノハはもちろんローの隣に座り、ビールを一気に流し込んでいた。
「ふぅ…最高っ!」
火照った体に冷えたビールが染み渡る。
クルー達と合流した後、そりゃあもう沢山歩いた。
何をしていたかと言えば、出店に並ぶ食べ物を片っ端から食べて食べて食べて…
ローがいっぱい食えなんて言うものだからつい甘えてしまった。
「ホラ、食え。」
またこうして餌付けをされるのだ。
まだまだ全然食べれるが、さすがに今日は食べ過ぎた。
「う〜ん…もうちょっと量減らそうかな。半分食べる?」
コノハの言葉に驚いたのか、ローの目が一瞬見開く。
「珍しいな。…熱でもあるのか?」
大きな手が額に置かれる。
「違くて…!」
ローは本当に心配性だ。
このまま本当の事を言った方が良いのだろうか。
「体調が良くないなら酒もやめておけ。」
それだけはやめてほしい。
やっぱり言ってしまおう。
「いやその…今日食べ過ぎたから…控えようと思って…。」
「控えるだと…?お前、自分の体をよく見た事あるのか。」
「へっ?」
何を言い出すのかと思えば、至ってローは真剣な顔。
想定外の言葉に声が裏返った。
「俺から見ればお前は痩せている…だからもっと食え。それに…」
一体どうしたのだろう。
何かを言いかけたローに首を傾げてしまう。
「俺はお前が沢山食べてる姿がー
「好きなんだってよ!」
ヒーローは遅れてやってくるもの。
2人のやりとりを見ていたペンギンは嬉しそうに胸を張った。
自分の食べてる姿が好きだなんて思ってもいなかった。
答えを促すようにローを見ると、その目はペンギンに向けられていた。
「テメェ…」
本当にペンギンはローを怒らせる天才だ。
「ちょっ、なんすか!俺はキャプテンの本音をー
「頼んだつもりはねェ。」
毎度怒られるペンギンは可哀想だが、案外この2人のやりとりが好きだったりもする。