第14章 あの人だけのものだから
その後買い物を済ませた2人はクルー達との待ち合わせ場所に来た。
メインである広場は人で賑わい、数え切れないほどの屋台が軒を連ねている。
どこもかしこも人。
ついでに言えば全員水着姿。
「見てるだけで息が詰まりそうだ。」
その景色にローの眉間に皺が寄る。
「でもみんな楽しそうじゃない?見てるこっちまで楽しくなるよ!」
さっき買ってやったアイスを食べながらこちらを見るコノハ。
本当にコイツはどこにいても楽しそうだ。
アイスが付いているのも気付かないほどに…
「ん?何か付いてる?」
ローの視線に何かを察したコノハは首を傾げた。
「あぁ。」
身を屈ませ、口の端に付いたアイスをローが舐めとる。
「ちょっ
驚きで大きい瞳が更に大きく見開かれる。
そして、後ろに下がろうとする頭をローの手が阻止した。
「オイ、逃げるな。」
口元を吊り上げたローの顔が迫り、唇が重なる。
アイスを食べていたその唇は甘くひんやりと冷えていて、ローの熱によってだんだんと温かさを取り戻していく。
幸い皆お祭り騒ぎで誰も気にも留めない。
甘い唇を一噛みし、顔を離せば耳まで赤くしたコノハと目が合う。
「……ッ!ここ外…!」
「ククッ…どこでキスしようが俺の勝手だ。お前もしたいならしてくればいい。」
そういうローはとても意地悪な顔をしていて…
何も言い返せないのをいいことにローの口角が更に上がる。
「オーイ!キャプテン!コノハー!」
この聞き覚えのある声は…。
くるりと振り返るとそこにいたのは水着姿のクルー達。
「ラブラブすんなら他でやって!」
「そーそー!」
一部始終を見られてしまったようだ。
わいのわいの騒ぐクルー達に再び顔が熱くなる。
「コノハ〜!その水着よく似合ってる!ってその体…話していた通りすごい跡ね…。」
白い肌に散らばる跡を少し哀れみの目で見るのはイッカク。
新しく入ったクルー達の中で唯一の女性だ。
「でしょ…?」
彼女と仲良くなるまでそう時間は掛からなかった。
女同士ということもあり、今では恋の話だってしている。
「ご愁傷様っ!」
イッカクが軽くコノハの肩を叩く。
2人の仲の良さは見ての通りだ。
楽しそうに笑うコノハを、優しい顔つきでローは見ていた。