第3章 船長命令だ
「わ、わあ。びっくりした〜。そんな大きな声出さなくても。」
急に大きくなった声に驚きながらも、そもそもなんでこの状況で手を繋ぐんだと、自分の発想がおかしいのか笑いながらもバスケットを差し出し、自分の横を歩くコノハ。
「…ったく。何考えてんのか本当に分かんねェ奴だ。一度頭を開いて確認してやろうか?」
そう言いながら帽子で顔を隠すかのように深く被るロー。
それは嫌だと笑うコノハを横目に、突拍子もない彼女の発言が未だに頭をグルグルと回っていて、うるさいほどに心臓がバクバクしている。
「…お前、さっきのが昨日言っていた力か。」
自分の心臓の音を聞き取られないように、少し大きめな声で言うと、そうだよと微笑みながら自分を見るコノハ。
「フン…大したもんだな。」
上から言うつもりもなかったが、さっきのことを早く忘れたくてつい上から目線で言ってしまう
「…ローさんって、自分のこと強いと思ってる?」
またも突拍子もない言葉に目を見開いていると続けてコノハが口を開いた。
「昨日草陰で見た時、この人は強いんだろうなって思ったの。
ローさんが仲間の人たちに上から目線で指示を出している時だって、みんな当たり前かのようにそれに従うでしょ。上から目線で色々言ってても、自分の強さに自信があるから出来るんだなーって。それに、強さだけじゃここまで慕われないなって思ってね!慕われるのは強さだけじゃなくて、優しさとか思いやりも必要だけど、やっぱりその全てを持っているから慕われているんだなーって思っただけだよ。」
「あぁ、俺は確かに強ェ。上からモノを言ってるのも自覚してるし、クルーのヤツらに慕われている自覚だってある。…ただ俺は優しくなんかねェ。思いやりとやらもよく分からねェ。」
ペラペラと話していたコノハの話を黙って聞いていたが、まるで自分が優しくて思いやりもあるかのように言われたので、黙っていられなくなり口を開いたが、次に耳にした言葉に再び顔が熱くなった。
「ええ?ローさん、自分が優しいの自覚ないの?それに思いやりだってあるでしょ!」
不思議な人だねと笑うコノハだが、俺からすればお前の全てが不思議で仕方ない。
熱くなった顔はコノハのせいなのか、気候のせいなのか、ローにはまだ分からない。