第3章 船長命令だ
「これで良し。」
元気になった花を確認し立ち上がると、木々の隙間から差し込む光が眩しくて思わず片目を瞑る。
地面に置いていたバスケットを両手で持ち、目的の場所に行こうと踵を返した瞬間、今まさに会いに行こうと思っていた人物が目に飛び込む。
「えっ!ローさん!!どうしてここに…?」
木に体を預けながら腕を組みこちらを見ているので、どうしたのかと思い小走りで近付くコノハ。
「…あぁ。……うちのクルー共がお前に礼を言いてェみたいでな。それでここまで迎えに来てやった。」
さも当たり前かのようにここまで来たと言われ、家ではなく何故ここにいるのが分かったのか不思議に思い首を傾げた。
「家まで行ったがいなかったもんで、ここに来たんだ。昨日森がどうとか言ってただろ。」
まさに思っていた事を言われ呆気にとられていたが、伝えたい事があるのを思い出し口を開く。
「なるほど!わざわざありがとう。…私も実はローさんとみんなに用があって、これから船に行こうとしてたところなの!」
用と言われても心当たりはないロー。
そもそもクルー達がお礼を言いたいなんて苦し紛れに出た嘘。
ロー自身コノハに用はないが、ただ気付いたら誘われるかのようにここへ足を運んでいた。
「…用?なんのだ。」
コノハが俺らに用があるなら好都合だ。
自分の意味不明な行動に悩まずに済む。
「みんなにおにぎりを作ったから、一緒にどうかなって思って。
あの2人が村の人たちの物を返しに行ってくれて、ベポくんもお家まで運んでくれたでしょ?ちゃんと昨日お礼言えなかったと思って、お礼を言うついでにおにぎりを持って行こうと思ってたの。」
自分の好物のおにぎりを作ってきたと言われ内心喜ぶが、さきほどから重たそうに両手でカゴを持つコノハに、自分が持つという意味で無言で手を伸ばす。
「…えっ?ごめん、両手でこれ持っているから手は繋げないかも!あっ、でもちょっと待ってね、持ち方を工夫すれば…」
「おい!そのカゴを持つって意味で手ェ出したんだ。手を繋ぐためじゃねェ。」
思いもよらないコノハの発言に顔が熱くなるローだった。