第13章 約束して
マルコが酒場に現れてから2時間後。
「ハハハ、すごい飲みっぷりだなァ。…男顔負けだよい。」
隣のテーブルでだらしなく伸びる男達を、マルコが憐れみの目で見る。
「ん〜〜、でも今日はちょっと酔いました。」
眉尻を下げたコノハが隣に座るローへ頭を預ける。
ここ数日の疲れからか、珍しく酔っている様子だ。
「ったく…今日はそこまでにしておけ。」
新しく入ったクルー達を次々と潰していくコノハに、ローは気が気ではなかった。
だから言ったんだ。
あまり飲みすぎるなと。
そう言おうとした時、胴体に何かが巻き付いた。
「!?」
その正体は細い腕。
「ん〜、ローの匂い…。」
猫のようにすり寄るコノハにローの目が見開かれる。
「お前…!」
離そうとしても離れない腕。
そればかりか、更に腕に力が入っているのは気のせいだろうか。
間違いなく酔っている。
ローの頭にその言葉が浮かぶよりも先にコノハが動く。
「よいしょっと。」
問答無用で跨り、胸に顔を埋めるコノハ。
しばらく固まっていたローがようやく我に帰る。
「オイ、コノハ。」
肩を揺さぶっても反応は無い。
微かに聞こえるのは小さな寝息。
大好きな匂いに包まれ安心したコノハは、ものの数秒で寝てしまったのだ。
「…。」
初めて見るコノハの酔った姿。
ローの胸はさっきからウルサイほどに鼓動を早めている。
だが、今はそれどころではない。
気を遣ってか何も言ってこないマルコ。
アホ面かまして騒ぐクルー達。
色々な意味でここは危険だ。
コノハの酔った姿でさえ独占したいローは、小さな体を抱えたまま立ち上がる。
「…見ての通りだ。明日出港前に最後の診察をしに行く。」
そう言い残しローはこの場を立ち去る。
すやすやと寝息を立てるコノハ。
ローの理性はもう持ちそうにない。