第13章 約束して
コノハが治療薬の研究をしてから4日が経った。
風呂とトイレ、食事以外は自室に篭りっぱなし。
それでもローの体を気遣い、食事は必ず3食作り一緒に食べている。
ローはというと、研究の邪魔をしないようコノハが自室に篭っている間は彼女の部屋の前で静かに読書をしている。
コノハとずっとくっついていたい気持ちはあるが、そうはいかない。
なんせタイムリミット付きの大仕事。
しかも頼んだのは他の誰でもない自分。
なので寝るのは今は別々だ。
一緒に寝てしまったら確実にコノハを抱き潰してしまうから。
ついでに言えば、過度のスキンシップもとらないようにしている。
理由は…言わずもがなである。
そんなローは、今日もコノハに触れたい気持ちを抑えるかのように本を読んでいる。
どこか落ち着きのない様子でローが立ち上がる。
「…。」
普段なら夕飯を作りに部屋を出てくるコノハが今日は待てども出てこない。
もしも部屋の中で倒れていたら?
そもそも部屋の中にいなかったら?
ここまでくると心配性という言葉では片付けられない。
だが、ローにとってはそんな事はどうでもいいのである。
いつだってコノハが一番なのだから。
コンコン
「コノハ。」
しばらく待っても返事はない。
ゆっくり扉を開けると、デスクのランプが付いている代わりに部屋の電気が消えている。
普段石鹸の香りが漂うこの部屋も、今じゃ薬品の匂いしかしない。
(寝てるのか…?)
薄暗い部屋の中、デスクに突っ伏すコノハ。
その隣では調合途中の薬がコポコポと音を鳴らす。
研究ばっかでまともに寝れていないのだろう。
ノートの上では愛らしい彼女が規則正しく寝息を立てていた。
(…体調は崩していないみたいだな。)
職業病か心配性か…
自然と伸びた手が額に触れる。
「んっ…。」
くすぐったいのか声を漏らすコノハにローの邪心が顔を出す。
クソ…。
眉間に皺が寄る。
今ここで手を出したら男失格だ。
コノハが必死に頑張っているのに盛ってどうする。
なんとか冷静を取り戻したローは、脱いだパーカーをコノハに掛ける。
コイツの為に何かできる事は…
何かを思い付いたローは急ぎ足で部屋を出て行った。