第13章 約束して
次の日、少年の家ではローとコノハがため息を吐いていた。
「やっぱり…。」
「…想像してた通りだ。」
原因は一つ。
リビングに寝転ぶクルー達と医者モドキ達だ。
昨日どれだけ酒を飲んだのか。
部屋中には酒の匂いが充満し、全員屍のように床に伏している。
紛れもなく、ここは患者の家だというのに。
「おい。お前ェら起きろ。」
クルーにそれぞれ丁寧に蹴りを入れるロー。
が、それでもこの屈強な男2人とクマ1匹は動じない。
「ロー、私が起こしておくからあの子の様子を…」
じっとコノハの目を見つめたローは、頼むと言い残し奥の部屋に向かった。
二日酔いとかそんなの関係無く、蹴りで起こされるのはあんまりだ。
3人が不憫に思えて口走ってしまったけど、さてどうやって起こす?
(これなら起きるかな…)
考えを思いついたコノハが大きく息を吸う。
「二日酔いの薬飲む人ー!」
未だ少年が眠るベッドをマルコとロー、そしてさっきまで二日酔いで死にかけていたクルー達が囲んでいる。
コノハはというと、リビングで医者モドキ達にも二日酔いの薬を飲ませている最中だ。
「随分顔色が良くなったよい。さすがだなァ。」
一晩中少年に付きっきりだったマルコは目の下に作られたクマを擦る。
「だがこのままだと再発する。原因が原因だからな…。」
昨日オペをしたローは瞬時に気が付いた。
マルコが話していた通り、少年の吐血の原因はこの島の気候が引き金になっている事を。
「ここからは俺の仮説なんだが…」
365日毎日強風が吹き荒れるこの島に、とある粒子が飛んでいるとする。
それが気道や臓器を傷付け吐血を引き起こす。
そして、耐えきれなくなった臓器が損傷し死に至る。
「もしもこの仮説が正しければ、ここに住んでいる以上再発は免れない。」
「あぁ、そうだよい。…だが、薬があれば話は別だ。」
薬…
そうか。
マルコの言葉でローの眉がピクリと動く。
そしてマルコも心当たりがあるかのように頷いた。
「アイツの腕は確かだ。なぁ、お前ェら…?」
どの薬屋に行っても高く買い取られる。
二日酔いでよくお世話になっているコイツらなら身の程を持って知っているだろう。
コノハが作る薬は間違いなく本物だと。