第13章 約束して
「そういえば医者モドキって知ってるか?」
「はぇ?医者モドキ…?」
急な話題、そして聞き慣れない単語にコノハの声が裏返る。
「この島にいるヤツらなんだけどなァ…
コノハが話について行けないままマルコが続けた。
この島には医者モドキと呼ばれているグループがある。
女一人、それ以外は男。
全員医学の知識が少しあるだけなので、もちろん医者ではない。
なので手術などは一切できない。
できる事と言えば、簡単な応急処置のみ。
それでも島の住人達は彼らを頼るのだと言う。
それは何故か。
この島には医者がいないからだ。
「医者がいない島ってそんなこと…。」
あまりの情報量の多さに頭を抱えていたコノハがぽつりと呟く。
「ありえるよい。ここ以外にも、どこかの冬島には医者がいないって聞いたことがある。」
「そう、なんですか…。」
いつかローが言っていた世界は広いという言葉。
確かにこれだけ広ければ、そんな島があっても普通なのかもしれない。
「実は医者モドキに頼まれたんだよい。この少年を助けてほしいって。」
マルコさんはそう言いながら壁に体を預けた。
あぁ、そうか。
医者モドキは自分達じゃどうしようもできないって分かってるから、医者であるマルコさんに頼んだということなのか。
マルコさんも一目でローが医者だと気付いていた。
医者モドキ達も同じように、直感でマルコさんが医者だと分かったのかもしれない。
医者の代わりに島の人たちを助ける医者モドキ。
彼らは一体どんな人たちなのだろう。
(医者モドキ…ちょっと会ってみたいな…。)
ふと、そんな事を思っているとなにやら外が騒がしい事に気付いた。
「あぁ、お出ましだよい。」
そう言ってマルコさんは頭を掻きながら玄関に向かった。