第13章 約束して
冷たい風が吹き荒れる中、マルコの後ろをローとコノハが歩く。
数分前、薬屋でコノハがマルコに病人の所に案内してほしいと頼み、ローも付いてきたのである。
「おい…。手を繋げ。」
スタスタと先へ進むコノハの手を掴む。
「マルコさんいるし迷子にならないから大丈夫。」
目を合わせようともしないコノハに顔を顰める。
振り解こうとする手を掴み直しポケットにしまうと、隣で小さくため息が聞こえた。
コノハは前を向いたまま。
ここまで怒らせたのは初めてかもしれない。
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「…てな感じだよい。」
マルコさんの説明を一通り聞き終えた。
目の前にいる少年は半年ほど前から謎の吐血に悩まされていて、原因は不明。
マルコさんの見立てによれば、恐らくこの気候が関係しているとのこと。
両親は3年前に同じ症状でそのまま亡くなってしまい、この広い家で一人で暮らしているらしい。
病気以外は同じような境遇で心が痛む。
「そういえばお嬢ちゃんは、医学の知識があるのか?それとも能力者かい?」
「どちらでもないんですけど、えっと…。」
なんて言えばいいのだろう。
答えに困っていると、隣から聞き覚えのあるため息が聞こえた。
「…俺が診る。」
急な発言に思わず振り返る。
「コイツは少し特殊な力を持っていてな…。まぁいい、まずは俺の能力で診察する。」
大きな手がするりと頭を撫で、消毒液の匂いが鼻腔をくすぐった。
そしてローはサークルを張り、少年の体をスキャンする。
「アンタには関係ないんじゃねェのかよい。」
「ただの気まぐれだ。」
マルコさんは最初からローが医者だと気付いていたみたいで、2人の会話はその後も自然と続いていった。
「俺は一度仲間と道具を取りに行く。戻ってきたらすぐにオペを始める。」
コートを羽織り直したローがマルコさんに近付く。
「コイツはここに置いておく、風邪でも引かれたら困るんでな。…俺がいない間に変な気を起こすんじゃねェぞ。」
「ハハ、肝に銘じておくよい。」
相変わらずローは心配性だ。
私だけではなく他の人にもそれを発揮してほしい気もするけど…
ふとそんなことを考えていたら頭の上にローの手が乗った。
「すぐ戻る。」
そう言い残しローは外へと出て行った。