第12章 まるで魔法だな
「そういえばお前ェ、コノハに強力な酒をプレゼントしたみたいだが…」
開口一番。
含んだ笑みを見せるローにペンギンの顔色からは血の気が引く。
「あああ!そういえば他にやる事があるんだった!失礼します!」
焦った様子のペンギンがこの場を去ろうと洗面所に足を向ける。
1歩、2歩と扉まで距離を縮めていく足を濡れたままの床は見逃さない。
「走ったら危なー
コノハが言葉を言い終わる前にペンギンの体が後ろに倒れる。
ゴンッ
鈍い音が風呂場に響く。
自然に閉じた目を開ければ床に転がるペンギンと目が合う。
「大丈夫!?」
腰を下ろし顔を覗き込む。
「俺も多分タンコブできたわ。」
笑うペンギンに胸を撫で下ろすが、ついさっき体験した痛みだからこそよく分かる。
笑い事ではないのだ。
「ちょっと失礼!」
床に転がるペンギンの手を掴み目を伏せる。
すぅっと息を吸い心で願えば、柔らかい風が頬を撫でた。
「治ったと思うけど、一応確認してくれる?」
顔を再び覗きこむと、咄嗟の行動に驚いたのかペンギンは一瞬目をパチクリさせた。
「いやいや、ぜってー治ってる!触らなくても分かるぞ!」
満面の笑みを浮かべるペンギンに今度こそ胸を撫で下ろす。
が、ホッとしたのも束の間。
さっきから刺さるような視線を感じるのは気のせいだろうか。
「…オイ。」
地を這うような低い声が風呂場に響く。
近付いてきた声の主を見上げれば、その声の主は不機嫌な顔でこちらを見下ろしていて…
「わ!?」
何を言おうかと考えた矢先、体がふわりと軽くなった。
肩に担がれたことでバランスを崩しそうになるも、なんとか耐える。
「ロー
「部屋に戻るぞ。」
ペンギンに力を使った事を怒っているのだろうか。
眉間に皺を寄せたローは洗面所へ足を向ける。
「コノハありがとな!お陰で良くなったぜ!」
声の方を見れば、未だ床に転がるペンギンが笑って手をヒラヒラさせている。
「ふふ、お互いケガには気をつけようね。」
「だな!」
やっぱり人の役に立てるのは嬉しいものだ。
ローに担がれながら3人に笑みを向ければ、3人も同じようにこちらに笑顔を向けた。