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魔法の手【ONE PIECE】

第12章 まるで魔法だな



大きな瞳に穏やかな顔をしたローが映り込む。

だが、それもほんの一瞬。
頬を撫でる手が退いたかと思えば、優しい顔つきのローの表情はみるみるうちに変わっていく。

「それで…お前ェらはいつまでそこにいる。」

怪訝な目つきで睨む先はクルー3人。

鋭い視線に、3人は背筋を伸ばす。

「えッ…いや!もう少しで終わるんで、終わったら出ていくッス!」

よほどローの機嫌を損ねたくないのだろう。
青ざめた顔のシャチがいち早く返答し、止まっていた手を動かし始める。

「ロー、もう少しで終わるから待っててくれる?」

再び見上げれば、ローは眉間に皺を寄せる。

「ったく。」

てっきり部屋に戻るのかと思ったがどうやら違うようだ。
ため息を吐いたローは風呂場の壁にもたれ掛かる。

(待つってそこで…?)

意外な行動に思わず目を見開いてしまった。

ベポ達も同じことを思ったのか、一度ローを見た後すぐにこちらを見た。

無言の圧に耐えられるかは別として、私としても今はローの機嫌は損ねたくない。

なぜなら、怒りの矛先はいつだって3人に向けられてしまうから。

早く終わらせよう。
そう目で伝えれば3人は勢いよく頷いた。



「ふぅ…」

額に滲む汗を手の甲で拭う。

なんとかローの無言の圧に耐えながらも掃除を終わらせることができた。

こんなに広い風呂場では1人だったらもっと時間が掛かっただろう。

3人には感謝の気持ちでいっぱいだ。

「3人とも、ありー

「そういえばそのピアス…!」

今まさに感謝の言葉を伝えようとしたのだが、ペンギンによってそれは阻まれてしまった。

「あぁ。クリスマスプレゼントでコノハから貰ったモノだ。」

無言で4人の掃除を見守っていたローがようやく口を開けば、ペンギンの顔がぱっと明るくなる。

「やっぱ似合ってるっす!」

親指を立てるペンギンにローは目線だけをそちらに向ける。

「本当っすよ?」

何も言わずこちらを見るだけのローに気まずくなったのか、ペンギンはもう一度投げかける。

だがそれでもローは何も言わない。

しばしの沈黙が続き、コノハが再び3人にお礼を伝えようと思ったその時、ペンギンを見ていたローの口元が弧を描いた。
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