第12章 まるで魔法だな
クルー達とコノハが風呂の掃除を始めてから30分。
自室で眠るローは、彼女のぬくもりを感じない違和感で目を覚ました。
「…コノハ……」
名前を呼んでも返事はない。
昨夜は腰が痛いというコノハの制止を振りきって、結局激しく抱いてしまった。
てっきり寝過ぎて急いで食堂に向かうのを想像していたが、今回はどうやら違うようで既に朝メシを作りに行ったらしい。
入眠を試みようと目を瞑るも、部屋に広がる石鹸の香りが邪魔をする。
「チッ。」
コノハのいないベッドで再び寝に入ることなど出来るわけがなく、体を起こせばひんやりと冷たい空気が肌に触れた。
今朝自分が寝ている間にやってくれたのだろうか、昨夜脱ぎ散らかしたはずの服は綺麗に畳まれている。
ローはその服に袖を通し、ふらりと自室を出る。
向かうは食堂。
コノハに触れたいローは足早に歩く。
すると、どこからか賑やかな声がする。
声の方に足を向ければ、そこはもう自分は使うことのない風呂場。
「…何してやがるんだ。」
洗面所に入ったローは風呂の中から聞こえるコノハとクルー達の声に眉を顰める。
まさか4人で風呂に…
考えたくもない事が頭に浮かび、風呂場の扉に手を伸ばす。
「そんでそんで!キャプテンのどこが好きなんだよ!」
中から聞こえるペンギンの声に伸びた手が止まる。
一体コノハはなんて答えるのか。
柄にもなく心臓が速く脈打ち、自然と眉頭に力が入る。
「ふふ、今日一日あっても挙げきれないよ。」
ご機嫌そうな声が耳に届けば、ローの心臓は跳ねる。
ただもう少し具体的な事を聞きたい。
どうやらそう思っているのはローだけじゃないようで…
「じゃァ、強いて言うなら!?」
すかさずシャチが投げかける。
期待と不安が入り混じり、いつしか口内には唾液が溢れ返る。
溜まった唾液を飲み込めばローの喉はゴクリと鳴った。