第12章 まるで魔法だな
洗面所の扉を開ければ、3人は目を輝かせた。
「わー!コノハよく似合ってるよ!」
「オレらより似合ってるんじゃねェか!?」
「くぅー!たまんねえな!キャプテンが見たらビックリするぞ!」
お世辞だとしてもやっぱり嬉しい。
「ふふ、ありがとう。」
照れ臭そうに鼻を擦るコノハが身を包むのは、真新しい白いつなぎ服。
そう、この船に乗るクルー達の戦闘服だ。
「でも、これ新品でしょ?わざわざこの為だけに良かったの?」
「何言ってんだよ、それはコノハのだ!」
貴重なつなぎ服をくれるというペンギンの言葉に、思わず目を見開く。
「それにオレらのお下がりなんか着せたら、キャプテンが怒るだろ!」
ローに怒られる事を恐れるシャチ。
さすが幼馴染なだけある。
ローの事はよく理解しているようだ。
「これはボクたち3人からのクリスマスプレゼント!」
そう言ってベポが頭を撫でてきた。
思いがけないプレゼントに胸の奥がじんわりと温かくなる。
「一生大切にするね。本当にありがとう!!」
緩む口元を隠すことが出来ず歯を剥き出して笑えば、3人は大きく頷いた。
早くローに見せたい気もするが、まずはこの荒れた風呂場をどうにかしなくては。
「じゃあ、ここの掃除再開させるね。」
3人にそう告げ風呂場に足を踏み入れる。
どこもかしこも毛、毛、毛。
ここまでくれば徹底的にキレイにしたい。
床に散らばった毛を集めようと腰を下ろすと、なぜか腕まくりをした3人も風呂場に入ってくる。
「えっと…?」
何をするのかと見ていれば、3人は床の毛を拾いだす。
予想外の行動に、ただ黙って見ていると威勢のいい声が耳に届いた。
「オレらも手伝うぜ!」
声の方に視線を向ければ、そこには楽しそうなシャチ。
「たまにはボクたちもお掃除しないとね。」
「今回はお前の毛が原因だけどな!」
そしてベポに冷静にツッコミを入れるペンギン。
「でも…」
3人の負担にならないよう断るべきか一瞬迷ったが、ここは彼らの好意に甘えよう。
幸い風呂場は広い。
4人で掃除をしても十分なスペースがある。
「じゃあ、お願いしますっ。」
コノハは屈託のない笑顔を3人に向けた。