第12章 まるで魔法だな
「3人とも、ありがとう。」
恐らく3人が来なければ、小一時間は天井を眺めていただろう。
濡れた服を絞り体に張り付くベポの毛を剥がしていると、申し訳なさそうにベポが俯く。
「コノハ、詰まったボクの毛をなんとかしようとしてくれてたんだよね?ずっと放置してきてごめんね。」
「ううん、謝らないで?私が掃除を怠ったせいでもあるの。」
フワフワの頭をひと撫ですれば、小声でベポはありがとうと呟いた。
萎れる白クマを抱きしめたいのは山々だが、この場を放置する訳にはいかない。
掃除を再開しようと腕捲りをする。
すると、いきなりシャチの顔色が変わった。
「オイオイ!その格好で掃除すンのかよ!?今すぐ着替えてくれ!キャプテンに見つかったらオレらがバラされる!」
一瞬こんなことで…と思ってしまったが、確かに相手はローだ。
例えクルー相手でもヤキモチを妬くのはよく分かっている。
発端が自分だとしても、結局怒られるのはいつも3人で…
「ごめんごめん、着替えるよ。」
3人が理不尽な怒りに巻き込まれないようにするためには、自分がしっかりしないといけない。
そんなことを思っていると、ペンギンが何かを渡してきた。
「じゃあ、これに着替えろ!これなら耐水力もバッチリだ!」
渡された物に目を向ければ、見覚えのあるそれに頬が緩む。
「これって…」
「コノハには大きいかもしれねえがよ!着てみろ!」
親指を立てるペンギンと他の2人はなにやら楽しそうで、こちらも胸がワクワクしてきた。
「ふふっじゃあ着替えてみる!」
「おう!着替えたら声掛けてくれ!」
3人を一度洗面所から出し、渡された服を目の前に広げる。
この船に乗ってから同じ物を毎日見ている。
いや、厳密に言えばハートの海賊団がホッ島に来た時からだ。
緩む唇を噛み、肌に張り付く服を脱ぐ。
下着は濡れてしまったが、さすがに下に何も着ないのはローが怒るだろう。
ひとまず下着の上から着るとしよう。
ドキドキしながら袖を通せば、真新しい布の匂いが鼻腔に届いた。
上までしっかりファスナーを閉め、ボタンを止めれば首についた跡も見えない。
髪を一纏めにし、浮ついた気持ちを抑えるように深呼吸をする。
「着替えたよー!」
さあ、お披露目だ。