第12章 まるで魔法だな
その後コノハは嬉しそうに洗面所へ向かった。
手にはリングのピアス。
両耳に一つずつ開いた穴にそれを通すと、鏡には口元が緩んだ自分の顔が写った。
(うわぁ〜、ニヤけてる私。)
その表情に若干引いてしまうような気もするが、こればかりは仕方がない。
嬉しさを抑える事など出来なくて、ワクワクした気持ちでローの元へ戻れば、なにやらキラリとした物が目に飛び込んだ。
「ロー!付けてくれたの!?」
小走りで駆け寄れば、その全貌が露わになる。
ローの左右の耳に2つずつ並ぶゴールドのピアスは、今さっき自分があげたばかりの物。
小さな顔に太めのリングピアスはよく映え、予想通り似合っている。
カッコいいのは勿論だが、何より付けてくれたのが嬉しい。
「…あぁ。気に入った。」
その言葉に胸が躍る。
あまり感情を表に出さないロー。
まだ一緒にいてそんなに経ってないが分かる。
この反応は間違いなく本物だ。
安堵の表情を浮かべていると、大きな手がスルリと頭に伸びてきた。
「お前もよく似合ってる。」
髪を掬い、露わになった耳を愛おしそうに見つめるロー。
「ロー、ありがとう。」
照れ臭そうに笑うコノハから石鹸の匂いが漂う。
この匂いを嗅ぐと色んな感情が顔を出し、気付けば小さな体を抱きしめていた。
この幸せが長く続くようにと、体を抱き締め直しキラリと光る耳に口を寄せれば、コノハの体は小さく跳ねる。
「風呂から出たらたっぷり可愛がってやる。大人しく待っておけ。」
顔を離せば口元を吊り上げたローと視線がぶつかり、コノハの目は丸くなる。
「なっ…!」
堂々と宣言されてしまうと恥ずかしいなんてもんじゃない。
体中の血液が全て顔に集まるような気がして、穴があるなら飛び込みたいくらいだ。
「フッ…。」
こういう反応が男心をくすぐるというのをコノハは分かっていない。
分からせたいのは山々だが、それはあとでのお楽しみ。
クツクツと喉を鳴らすローは、赤くなった額にキスを一つ落とすと、風呂場へと向かった。