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魔法の手【ONE PIECE】

第11章 触らないで



ローの部屋に来てからどれくらい経っただろうか。
5分、いや10分は経っている。

部屋に入るな否やローに抱き締められたコノハは、ただローの胸の鼓動の音だけを聞いていた。

短いようで長い10分。
お互い言葉は発さず、部屋にはカモメの鳴く声と波の音だけが響いている。


だんだんと抱き締められる力が強くなり、逃げ場を作ろうと小さな頭が動いた。

それを皮切りに、ローがようやく口を開く。

「…悪かった。」

上から降ってきた言葉にコノハは顔を歪ませる。

「頼むから俺の話を聞いてくれねェか。」

普段人を頼らないローから出たその言葉は、コノハの瞳を大きく揺らす。

弱々しい声で言われてしまえば無視なんかできない。

力強く体に巻きつく腕はそのままに、意を決して顔を上げた。


昨日の夜ぶりだというのになんだか久しぶりにローの顔を見たような気がする。

目の下に作られた濃い隈は、恐らく自分の部屋の前で夜を明かした際に作られたものだろう。

出て行けなんて言わなければ、ローはあんな所で寝ることなんてなかったのに。
なんて酷いことをしてしまったのか。

「ロー、ごめんなさー

「俺はお前しか見てねェ。」

遮るように発したローの言葉はコノハの心臓を跳ねさせる。

もう振り向いてくれないと思った。
そんな言葉は聞けないと思った。

船から降りることを覚悟していたその目には涙が浮かんだ。

「っ、ロー…私…。」

言葉の通り真っ直ぐな瞳で自分を見るローの顔がだんだんとボヤけていく。

大きな手が頬に触れ、遂に涙が溢れたのだと理解した。

己の唇を噛むコノハにローは眉間に皺を寄せる。

そして綺麗な唇が傷付かないようにと、きつく結ばれた小さな唇に触れた。

「…お前以外愛せねェ。」

少し不安げに見えるその表情が大きな瞳に映る。

「私…っ、船から降りなくちゃっ、て、思ってて…っ。」

声を詰まらせるコノハにローの目の色が変わる。

そこまで追い詰めてしまったとは。
包み隠さず話さなければ、恐らく安心させることはできない。

目から大量の涙を流すコノハを優しく抱き上げると、ローはソファーへと座らせた。

そして自分も隣に座り、昨日のことを話すのだった。
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