第11章 触らないで
「コノハ!今日はたっぷり付き合うぜ!」
あの後、コノハを元気付けようとペンギンが放った一言でロー不在の宴は再開された。
3人のおかげで少し元気になったものの、やはりあの2人が気になるコノハは普段の倍のスピードで酒を煽っていた。
そしてその結果がこれである。
「うィ〜。もう限界…。」
「わ〜メスのクマだ〜。待て〜ムニャムニャ…。」
「…ZZZ……。」
机に伏す3人にコノハは顔の前で両手を合わせる。
意識はあるものの顔色の悪いシャチ。
メスのクマの夢を見て幸せそうなベポ。
ペンギンに至っては完全に夢の中だ。
なんて酒の弱い男たちなのだろうか。
酒場にいる客の大半は、そんなクルー達を憐れみの目で見ている。
否、ベポ達が弱いのではない。
コノハが強いのだ。
ハイペースで酒を飲んだというのに大して顔色を変えないコノハは、3人に詫びれながらも壁に掛かる時計に目をやる。
2人がここを出てからもう1時間は経っている。
すぐ戻る。そう言ったはずのローはまだ戻ってきていない。
信じていないわけじゃないが、やっぱり気になる。
居ても立っても居られないコノハは席を立ち、店の出口へと向かう。
何も無いに決まってる。
そう自分に言い聞かせ扉に手をかける。
木が軋む音と共に扉を開けば、ほんのり冷たい夜風が頬を撫でた。
「どこだろう…。」
体を震わせながら辺りを見回すと、信じられない光景が目に飛び込む。
「ッ……!」
大きな瞳に映るのは、女とキスするローの姿。
目を見開いたローと視線がぶつかった瞬間、コノハは急いで踵を返した。
「なんで…ッ…。」
胸が張り裂けそうなほど痛くて苦しい。
それでも止まりたくない。
後ろで自分の名を呼ぶ声も今のコノハには届かない。