第11章 触らないで
サンカク島に上陸してから1週間。
ようやくログが溜まったハートの海賊団は、明日の出航に備えてお決まりの宴を開いているようだ。
「あー!それボクのー!」
「ギャハハ!相変わらずの食いしん坊!」
「よっしゃコノハ、いけいけー!」
ベポの分の肉を横取りするコノハにシャチとペンギンは腹を抱え、ローはそんな4人を見ながら静かに酒を飲んでいる。
「もたもたしてると全部食べちゃうよー!」
片手にビールを持ちながら肉を頬張るコノハの姿にローは目を細める。
小柄なくせに酒飲みで大食漢。
そして良い雰囲気だろうと鳴る腹の音。
ムードもクソもないが、偽る事なく己の欲求に素直な彼女は見ていて清々しいほどだ。
ローはそんなコノハが好きでたまらない。
肉のカケラを口に付けるその姿でさえも愛おしい。
「ったく、そんな急いで食べる必要はねェだろ。」
拭った肉を自然と口に運べば、コノハはすぐさまローの方へと顔を向ける。
「ふふっ、取ってくれてありがとう。サンカク肉美味しくない?」
「こんな少しじゃ味が分からねェ。」
ローはそう言うと細い腕を自分の方に寄せ、小さな手が持つ肉に食らいつく。
「わお。」
前に座るペンギンはローの行動に驚いている。
「アツアツだなァ。」
「キャプテン幸せ者だね。」
シャチもベポもその行動に驚きながらも目を細める。
「うまいがお前が作ったメシの方が100倍うめェ。」
普段なら喜ぶセリフも今のコノハには届かない。
「これ、最後の一つだったのに…。」
悲しそうな顔をしたコノハは手から消えた肉を遠い目で見ている。
たかが肉ごときで。
今までのローならそう思っていたが相手はコノハ。
「悪ィ。明日買ってから出航するか。」
結局甘やかしてしまうのである。
「本当!?やった!」
そして極端なコノハはその言葉に目を輝かせる。
「「「極端すぎるだろ…!」」」
さすがのクルー達もツッコまずにはいられない。
「ったく。」
出会った時から変わらない、表情をコロコロと変えるコノハにローは幸せなため息を吐く。
だが幸せな時間は長くは続かない。
穏やかな顔をするローに怪しい人影が忍び寄る。