第11章 触らないで
ローへのプレゼントを買ったコノハは、言いつけ通り無事船に戻ってきた。
「ペンギン、付き合ってくれてありがとう!長い時間拘束しちゃってごめんね。」
結局あの後、また違う場所で買い物をしペンギンを付き合わせてしまった。
顔の前で両手を合わせるコノハにペンギンは歯を剥き出して笑う。
「気にすんなって!俺は楽しかったぞ!」
小さな頭をグシャリと撫でると嬉しそうにコノハは微笑む。
「っと、ちょっと待っててくれるか?渡してぇモンがあるんだ。」
その言葉に首を傾げるとそのままペンギンはどこかへ行ってしまう。
しばらくその場で天を仰いでいると何かを持ってペンギンは戻ってきた。
「これやるよ!」
小さな紙袋を渡されたのでとりあえず受け取る。
「コノハ酒好きだろ?俺からのプレゼントだ!」
「えっ!いいの!?」
酒が好きなコノハは素直に喜ぶ。
「それ結構強いからよ、寝る前に飲むのが一番だと思うぜ!」
寝酒はした事がないが、どうせなら今度やってみよう。
やっぱりプレゼントは嬉しい。
「ありがとう、ペンギン!」
満面の笑みを向けるコノハにペンギンも笑う。
「おう!じゃっ、俺はシャチと街行ってくるぜ!」
再び街に出るというペンギンに手を振ると、自室に足を向ける。
早くローにプレゼントを渡したい。
それでもまだクリスマスは1週間後。
逸る気持ちをなんとか抑え、自室の棚に荷物をしまうとある事に気がつく。
「あれ、そういえばローは?」
船に戻ってきてから10分は経っているのに、コノハはようやくローの不在に気付いた。
「部屋かな。」
隣に位置するローの部屋をノックしてみても返答はない。
「入るね。」
扉を開けてみるもやっぱりその姿はない。
ここにいないなら街に行ってるのだろうと、吸い込まれるように小さな体をベッドに預ける。
「ん〜いい匂い。落ち着く…。」
嗅ぎ慣れた消毒液の匂いが鼻腔に届けば、自然と瞼が重くなる。
愛する人の匂いに包まれて安心したコノハはそのまま目を閉じた。