第11章 触らないで
「ペンギン、くれぐれもコノハから目を離すんじゃねェぞ。」
ウォーターセブンの二の舞にならないよう、ローは鋭い目付きでペンギンに釘を刺す。
背筋を伸ばすペンギンの隣にはコノハ。
これから街へ向かうというトラブルメーカー2人を、ベポとシャチは不安そうな面持ちで見ている。
「ロー、心配しすぎだよ?私なら大丈夫だから!」
そんな心配をよそにコノハはニコニコと笑顔を振り撒く。
(どの口が言ってんだよ…!)
クルー達が心でツッコミを入れたのはさておき、どうしてコノハとペンギンが2人で街へ行くのか。
それは数分前のこと。
買い物を済ませた5人は、ローの指示通り一度船に戻ってきた。
これから自由行動だとローが言うとコノハはなにやらローに頼み事があるようで…
「ペンギンと買い物に行ってきてもいい?」
その言葉にローの眉間には皺が寄った。
なぜ自分と行かないのか。
コノハが望むことならなんだってしてあげたいのに。
そんなローの心の声が分かったのか、恥ずかしそうにコノハは言った。
「クリスマスプレゼント…選びたいの…。」
密かにプレゼント交換を楽しみにしているローは条件付きで了承した。
ペンギンの側から離れないこと。
これさえ守れるなら文句は無いと送り出すことにしたのだ。
「じゃあ、行ってきます!」
手を振り街の方に向かうコノハ。
ローはその姿が見えなくなるまでデッキにいた。
自室に戻ってきたローは本でも読もうとソファーに腰を下ろす。
しばらく本を読んでいたローだが、ページを捲れども内容が全く頭に入ってこない。
コノハはいないというのに、部屋に染み付く石鹸の匂いにローはため息を吐いた。
「アイツのプレゼントでも見に行くか。」
どうせなら何を買ったか渡す時まで秘密にしておきたい。
ほとんど、いやずっとコノハと行動を共にしていたいローにとって、1人で買い物に行くのは今がチャンスなのだ。
手に持つ本を棚へしまうと自室を後にするロー。
そしてそのまま船を降り、愛する彼女のプレゼントを買いに街へと消えていった。