第11章 触らないで
シャチとペンギンがしっかりとローに蹴りをお見舞いされたところで、無事にハートの海賊団はサンカク島に上陸した。
「わ〜!お店いっぱい!」
目の前に広がる飲食店や雑貨屋に興奮しているコノハは、数分前の事などもう忘れているようだ。
キョロキョロとあちこちを見回すコノハの手を掴むとローが口を開く。
「いつも通りお前ェらは必要なモンを揃えてこい。俺もコノハの買い物に付き合う。そしたら船で集合だ。」
「「「アイアイサー!」」」
クルー達がその場を離れると2人も歩き出す。
1ヶ月船での生活をしていた足は、久しぶりの大地の感覚に喜んでいるようで足取りがとても軽い。
鼻歌を歌う上機嫌なコノハにローは目を細める。
「そんなに嬉しいか。」
「久しぶりの陸ってのもあるけど、初めて来る島だよ?嬉しくないはずないでしょ!」
満面の笑みを向けると穏やかな顔をしたローと目が合い、コノハの胸は熱くなる。
顔を綻ばせながら歩いていると本屋が目に入り再びローを見上げる。
「いい?」
「俺がダメだと言ってもどうせ行くだろ。」
「ふふっ。」
完全に読まれているコノハはローの手を引き本屋へと入る。
薬学の本はどこにあるのかと辺りを見回していると、機嫌の良さそうなローの声が耳に届いた。
「また俺を喜ばす本でも買うのか?」
その言葉に身体中の血液が一気に顔に集まる。
「ち、違う!」
もうあの本でさえ必要ないのに増やしたところでどうなるのか。
それにああいう類の本は見てもさっぱり分からない。
顔を赤く染め下唇を噛むその表情に、ローはため息を吐く。
どうしてこんなにも可愛いのか。
コノハに出会ってから、柄にもなくそんなことばかり考えてしまう。
「フッ、早く次行くぞ。」
可愛い理由など考えたところで意味が無い。
自己完結をしたローは形の良い尻をおもむろに掴む。
「ちょっ…!ここ外…!」
いきなり尻を掴まれたコノハは体を跳ねさせローを見上げる。
「外じゃなきゃいいんだな。」
反応の良い彼女を揶揄うローは、まるで新しいおもちゃを見つけた子どものようだ。
「…っ、もう!」
ローの言葉に恥ずかしくなったコノハは、逃げるように薬学の本を探しに行った。