第11章 触らないで
「みんな、もうすぐだよ!」
ベポが指を指す方向に目を向ければ大きな島が目に飛び込む。
「早く島特産の物食べたいな〜!」
目を輝かせながら島を見つめるコノハに、ローはため息を吐いた。
「さっきメシ食っただろうが。」
「それとこれとは別だよ。」
朝ご飯を済ませたばかりだというのに既に食べ物のことを考えているコノハは、嬉しそうな顔でローを見上げる。
呆れた表情を浮かべるローに身を寄せようと近付くと、いきなり腕を掴まれどこかへ連れて行かれるコノハ。
「ロー?これから上陸でしょ?もしかして私お留守番?」
さすがの食い意地に愛想でも尽かれたか。
リビングに連れて来られたコノハは不安な顔を浮かべた。
ローはそんなコノハを無言で壁に押し付けると、長い髪をかきあげ首元に顔を近付ける。
「んっ…。」
何度も体験したことのある痛みにコノハは目を瞑る。
何箇所も首にその痛みが広がっていき、終わったかと思いきや触れるだけのキスをされ体が離された。
「男避けだ。」
自然と目を開ければ満足そうな顔をしたローと目が合い、コノハの顔はみるみるうちに赤くなっていく。
「見える所に付けないでって何回も言ってるのに!」
あれから何度も見える所に跡を付けられているコノハは、懲りないローに頬を膨らます。
愛らしいその表情に、ローはクツクツと喉を鳴らした。
「見えねェ所に付けたら男避けの意味がねェだろ。」
「うっ…。」
ごもっともな答えに言葉が詰まる。
何も言えないコノハにローが口元を吊り上げていると、デッキから2人を呼ぶ声が聞こえる。
「キャプテーン!コノハー!もう着くよー!」
未だ悔しそうな顔をしたコノハの手をとり、ローはデッキへと足を向ける。
もう何度もベポ達に跡を見られていても恥ずかしいものは恥ずかしい。
それでもどうにも出来ないコノハはローに手を引かれるまま後をついて行く。
デッキへ戻るとさっきまで遠くにあった島が目と鼻の先にあり、自然と笑みが溢れた。
そんなコノハを差し置いて、シャチとペンギンは白い首に浮かぶ無数の跡をニヤニヤしながら見ている。
「見ろよあれ、すげぇ跡。」
ペンギンの一言に現実に戻されたコノハの顔は再び赤くなった。