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魔法の手【ONE PIECE】

第10章 そういうところも好きだよ



コノハがローの口元に付いた米を全て口に運び終えると、その本人が口を開いた。

「…急に何しやがる。」

怪訝そうな目付きをしながらも耳まで赤いロー。

さっきから鳴り止まない心臓の音は、今にも全員に聞こえてしまいそうだ。

「何って…ベポにしたのが羨ましかったから怒ったんでしょ?だから、ローにもやってあげようと…。」

さらりと答えたコノハに、ローは言葉を詰まらせる。

相手が人間の男ならもっと怒っていただろう。
ただ、今回の相手は雄の白クマ。

本来ならそこまで気にしない相手なのにローが怒ったのは、コノハの言う通り羨ましかったからだ。

「羨ましくなんか無ェ。」

例え地球がひっくり返ろうとも、ローは本心を口にしない。

「本当に?ここ真っ赤だよ?」

なんて嘘を吐くのが下手なんだろうか。

クスクスと笑うコノハは、赤くなった耳を触る。

「うるせェ。」

視線だけそちらに向ければ、楽しそうに笑うコノハと目が合いローの心拍数は更に上がる。

「ふふっ。」

賭けに出たコノハはこの結果に胸を撫で下ろす。
なんとか良い方向に持ってこれた。

ひとまず、これ以上は機嫌が悪くならないはず。

そんなことを思っていると、それを見ていた人物が口を開く。

「キャプテン、照れてる。」

せっかく丸く収まりそうだったのに、さすがは期待を裏切らない男。
黙っていればいいものの、やっぱり口を挟んでしまうペンギン。

「オイ、なんですぐお前はそういう事言うンだよ!」

余計な事を言うペンギンの肩を揺さぶっていると、シャチの視界の端で何かが動いた。


「気を楽にしろ、すぐに終わる。」

冷気を纏ったこの船の主は問答無用に指を動かす。

サークルが展開される音に、その場にいる全員に戦慄が走った。

「まっ!待って!キャプテン!!!」

額に多量の汗をかくペンギン。
軽々しく揶揄ったことを今更後悔しても遅いのだ。

「聞こえねェな。」

ニヤリと口元を吊り上げるローはペンギンとの距離をじりじりと詰めていく。


せっかくの楽しい食事の時間もこれにて終了。

お決まりの展開にコノハも他の2人も静かに船内に入ると、大海原にペンギンの悲痛な叫びが響き渡った。
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