第10章 そういうところも好きだよ
「あ、えっと…?」
何か怒らせてしまったようだが全く心当たりがない。
けれどもついさっきまで普通の機嫌だったローは、今やどうだろう。
最高に機嫌が悪いではないか。
こんな短時間で何をしてしまったのか、コノハは顎に手を当てる。
体調が悪いのを心配されたけど、別にどこも悪くないし嘘だってついていない。
タマゴサンドを二口で食べたこと?
もしかしてローも食べたかったとか?
いや、でもパンは嫌いなはず…。
数分前の記憶を掘り起こしているとコノハの目にあるものが止まった。
まさか…。
「もしかして、ベポの口に付いたお米を食べた事に対して怒ってるの…?」
「あァ?」
そのまさかだ。
機嫌の悪いローは、噛み付くような目線をコノハに向ける。
「その…ごめんね?でも、ベポ相手にヤキモチ妬かれても…。」
その言葉にローは眉毛をピクリと動かす。
「…なんだと?」
しまった。ローはこういう人だ。
クルーだろうと相手が男なら、関係なく嫉妬をする。
もう一度謝ったところでローの機嫌は良くならないだろう。
それならどうするかと全員を見るコノハ。
心配そうにこちらを見るベポに、恐怖のあまり遂に抱き合うシャチとペンギン、そして機嫌の悪いロー。
「ちょっと失礼!」
これ以上、二次災害を起こすわけにはいかないと、コノハの手が伸びた。
行き着く先は、さっきまで頬張っていたおにぎりの残りを持つローの手。
そして手首を掴み、おもむろにローの口元へおにぎりを押し付ける。
「ッ!?」
理解不能な行動にローもクルーも目を丸くするしかない。
そんな4人には目もくれず、コノハはもう一度おにぎりを押し付けると、口から離す。
「もうロー以外の人にはしないから、これで許してくれる?」
さっきベポにやったように、ローの口元に付く米粒を口に運ぶコノハ。
予想外の行動に、2人を見守っていたクルー達は生唾を飲み込んだ。