第10章 そういうところも好きだよ
ウォーターセブンを出てから3週間が経ったある日のこと。
順調に航海を進めるハートの海賊団は皆デッキに腰を降ろし、コノハの提案でピクニックをしていた。
「ウマいッ!やっぱりコノハの作るモンは最高だな!」
シートの上に並べられた手料理は、次々とクルーの胃袋へ流れていく。
「ふふっ、ありがとうシャチ。」
大勢で食事をする楽しさをこの船に乗ってから知ったコノハは、全員で食事をするこの時間がとても好きだ。
珍しく料理に手もつけずにクルーを見ていると、その隣に座るローは怪訝そうな目でコノハを見た。
「おい、コノハ。さっきから全然食べてねェが、体調でも悪ィのか。」
幸せな時間に目を細めていたコノハの額にローは手を当てる。
「熱は無ェようだが…。」
大食漢の彼女がここまで食べないのは何かあるのではと、コノハの顔を覗き込むロー。
いきなりの行動にコノハの顔は赤くなる。
「ちょっ!ビックリした…。何もないよ?幸せだなーって思ってただけ。」
そう言うと自分の作った料理に手を伸ばすコノハ。
タマゴがたっぷり入ったサンドウィッチを二口で食べるコノハに、ローは胸を撫で下ろす。
そんなやり取りを半ば羨ましそうに見ていたベポの口元に、細い腕が伸びた。
「あれベポ、口にご飯粒付いてるよ?」
コノハが手に持つ米粒をそのまま口に含むと、賑やかだった空間がガラリと変わった。
冷気を放つローに、ブルブルと怯えるシャチとペンギン。
ベポはというと頭を抱えている。
刺さるような視線に気付いたコノハはその方へ目を向ける。
「テメェ…。」
さっきまで自分を心配していた目とは違い、鋭い目付きで自分を睨むローに自然と背筋が伸びた。