第10章 そういうところも好きだよ
「ふふっ、ローの心臓の音すごい早いよ。」
腕の中で楽しそうに笑うコノハは、どうやら少し元気を取り戻したらしい。
「少しは落ち着いたか。」
その言葉に答えるように短い腕がローの背中へ伸びる。
「うん、ありがとう。」
顔をあげると目尻を下げるコノハに、ローの顔が近付く。
「んっ。」
触れるだけのキスを落とすと夜風で冷えた頬を大きな手が包み込む。
大きな瞳で自分を見つめるコノハに、ローの気持ちは膨れていく。
もう自分の心臓の音など気にしていられない。
周りに聞こえようが笑われようが、この鼓動は紛れもなくコノハに向けられているもの。
「…一つ言っておくがコノハが俺を想うよりも、俺がコノハを想う気持ちの方がでけェ。絶対ェ忘れるな。」
突然のローの言葉にコノハの目が見開いた。
いや、確かにローの優しいところも好きだとは言ったが、別に張り合うつもりで言ったワケではない。
ただ思ったことを口にしただけだ。
ただそんな事を言われてしまうと、コノハも負けていられないワケで…。
「ううん、残念ながらローを想う気持ちは私の方が大きいの。これだけは譲れないから!」
自分に張り合うコノハにため息を吐くロー。
そう来ると思った。
このままどちらかが退かなければ朝になるだろう。
「ったく…。でもまァ確かに、俺が寝てる間にキスするぐらいだもんな。」
その言葉に小さな体が跳ねる。
「なんでそれを…!」
大きな目が更に大きくなり、ローはクツクツと喉を鳴らす。
「さァ、なんでだろうな。」
あの時起きていた事がバレれば、2度と同じような事はしてこないかもしれない。
それでも反応の良いコノハを揶揄うのはやめられない。
「部屋に戻るぞ。風邪でも引かれたら困る。」
口をパクパクさせたコノハの額にキスをすると、立ち上がり手を引くロー。
寝ている間にキスをした事がバレてしまったコノハは俯きながら付いて行く。
「アレは…キャプテンとコノハ?」
赤い顔をしたコノハがローに手を引かれて歩くのをたまたま見かけたベポは、小さな背中にエールを送った。