第10章 そういうところも好きだよ
「その力は使っちゃダメ。」
自分に指をさす人物の顔は、霧がかかったようで口から上はよく見えない。
「それってどういう意味?」
その人物はその問いにクスクス笑うとこちらへ近付いてくる。
伸びた手はコノハの首を掴み、次第にその力は強くなっていく。
「離し…っ!」
首を絞められている事で声帯がうまく機能しない。
酸素もだんだんと薄くなっていき、体の力が抜けていく。
諦めるしかないのかと目を瞑ろうとした時、かすかに耳に届いたのは聞き覚えのある声。
「…い、おい!起きろ、コノハ!」
その声が誰だか分かると、コノハは勢いよく目を覚ました。
「っ!」
滲んだ視界が捉えたのは、紛れもなく最愛の人。
「大丈夫か、酷くうなされていたみたいだが…。」
自分を見つめるその顔はとても心配そうで…
「ロー…。」
目の前の胸板に飛び込むコノハ。
安心する匂いに目からは涙が溢れた。
強く抱きしめられたローはコノハの背中に手を回し、頭を優しく撫でる。
「変な夢を見た気がするの…。でもまた思い出せなくて。」
ローは一度強く抱き締めると体を離す。
いきなり奪われたぬくもりを探すようにコノハは顔を上げた。
「夜風に当たりにでもいくか。落ち着かねェだろ。」
頬に伝う涙を指で拭ったローは体を起こす。
追うようにコノハも体を起こすと、それを見ていたローがクスクスと笑う。
「まずは服を着ろ。」
その言葉にコノハは体に目をやる。
「ッ…!」
すっかり忘れていた。
寝る前あんなに激しく愛し合っていたじゃないか。
夢に引っ張られすぎて自分の格好など覚えていなかったコノハは、いそいそと服を着る。
その間もコノハの体を見ていたローはクツクツと笑っていた。
白い体に浮かぶ赤い跡は紛れもなく自分が付けたモノ。
体の至る所に散りばめられたソレに、ローはゾクリと背中を震わせた。