第2章 そうやって、笑うんですね
食器を片付けたあと、今まで見た海獣で一番大きかったのはどれくらいの大きさだとか、オペオペの実はどういう能力なのかとか、コノハからの質問攻めにあっていた。
なんとか適当にあしらうように答えていると、目の先にはさっき自分の形見だと言っていたネックレス。
「言いたくねェなら無理に言う必要はねェが…。あれはコノハにとってどういうモンなんだ。」
自然と口から出た言葉にコノハは首を横に振ると、小さな口を開いた。
コノハは10歳の時に母親が政府の指示で海軍に連れて行かれ、母親を庇った父親は彼女の目の前で殺された。
突然現れた海軍に島の村人たちは大パニックで、ただ見ていることしかできなかったのだ。
ひげじいが自分の面倒を見てくれていること、そして自分はその薬屋を手伝っていることをローに話すコノハ。
淡々と話す彼女に、ローの顔が曇る。
何故コノハの母親は連れて行かれた?
「なんでこんな小さな村に住んでいるお母さんが、海軍に連れて行かれたのかと思っているでしょ?」
まさに思っていた事を言われ、ローの胸がドキリと鳴る。
「無理に話す必要はー」
「いいの。せっかく同じ歳なんだもん。お話させてよ。」
敬語ではなくなった口調に、さっきと違う音で鳴るローの胸。
ローの言葉を遮ったコノハは、泣くのを堪えるかのように震える小さな声で続けた。
コノハの母親は、不思議な力を手に宿すと言われている家系に生まれた。
母親の母親も、そのまた母親もみんな同じ力を手に宿していて、生まれた頃からその力をずっと手に宿してはいるが、力が発揮するのは自分の母親が死んだ時。
皮肉にも、肉親が死んで初めて力が継承されるのだ。
「この力は心で願いながら生き物に触れると、その願い通りに生き物が応えてくれるの。…って言ってもそんなに都合の良いものではなくて、例えば死んだ人は生き返らせる事ができないみたい。
…ただ、弱っている命に触れて癒したり回復させる事はできるの。怖いのはその反対で、心で願えば命は簡単に奪う事ができてしまうんだって、小さい頃お母さんが教えてくれたの。」
不思議な力でしょ?と悲しそうに自分の手を見つめながら話すコノハ。
ローはただ自分の拳を握り締めることしかできなかった。