第10章 そういうところも好きだよ
よく晴れた昼下がり、コノハはシャチに釣りを教わっていた。
「いや〜、全然釣れそうにないや。」
眉尻を下げ笑うコノハにシャチもつられて笑う。
「まァ、まだ始めて5分しか経ってねェからな!そりゃ当たり前だろ!」
そう言うシャチのバケツにはもう既に5匹もの魚が入っている。
生まれ持ったセンスとはこういうことだろう。
それでも気長に待つしかない。
沈まない竿を眺めていると、ペンギンが現れた。
「お、コノハが釣りなんて珍しいな!」
ペンギンの手には釣り竿とバケツ。
どうやら彼もこれから釣りをするようだ。
「いつも3人に任せっぱなしだから、私も少しはできるようにならないとね!」
笑顔でそう答えると、コノハの釣り竿がしなる。
それに気付くと腕まくりをし、竿に手を掛ける。
「いいぞコノハ!その調子だ!」
あれよあれよと竿を上げれば、釣り糸にかかったのは小ぶりなアジ。
小さかろうが、初めてのヒットにコノハは体を跳ねさせる。
「やったやった!釣れた!」
子どものようにはしゃぐ姿にシャチもペンギンも目を細めている。
「良かったな、コノハ!どれ、俺が針外してやる!」
ペンギンの心遣いも嬉しいが、ここまで来たなら自分でやってみたい。
好奇心に勝てないコノハは首を横に振る。
「ペンギン、ありがとう!でも自分でやってみる!」
ピチピチと動くアジを片手で押さえ、もう片方の手で口から針を外す。
外れたタイミングで魚が勢いよく暴れ出し、それを止めようとすると持っていた針が指に食い込んだ。
「痛っ!」
痛みに顔を歪ませたコノハにシャチとペンギンは慌てふためく。
「「大丈夫か!?」」
言葉を被らせた2人は指に刺さった針を抜こうとコノハの手を掴む。
慣れた手つきで針を抜けば、指の腹からは血が滲んだ。