第10章 そういうところも好きだよ
首を傾げるコノハは頭の中を整理していた。
自分がローに注意してからというもの、頸にキスマークなんて付けられた覚えはない。
ペンギンは嘘をついている?
いや、だとしたらローのこの怒りようはおかしい。
こうなったら本人に聞くのが一番早い。
「ねぇロー、頸にキスマークなんて…付けた?」
ペンギンの首の根っこを掴むローは、コノハの問いにクツクツと喉を鳴らす。
「あぁ。お前が寝ている時にな。」
「なっ!?」
ローは詫びれる様子など一ミリもないようだ。
その答えにコノハの顔が再び赤くなると、ベポが目を輝かせる。
「それキャプテンが噛んだの!?凄いねえ、猛獣みたい!」
呑気な白くまにコノハは肩を落とす。
みんなに茶化されるのを分かっていたからローにあれだけ言っておいたのに。
「アレ、でもコノハも猛獣みたいだね。キャプテンの首にも同じ跡がついてる。」
楽しそうに話すベポの言葉にシャチとペンギンはローの首を見る。
はだけたシャツから覗く胸と首には、コノハと同じ跡が散らばっているではないか。
「あぁ、コイツはとんでもねェ猛獣だ。お前ェらも噛まれたくなきゃ、安易に近付かないことだな。」
口元を吊り上げたローはペンギンの首を離す。
これじゃまるで公開処刑だ。
顔を赤くしたコノハはローに詰め寄る。
「ちょっと!適当なこと言わないでよ!」
吊り上げた口元が再び開かないように、ローの口へ手を伸ばすコノハ。
絶対届かないというのに手を伸ばす彼女はローの前で飛び跳ねる。
頬を膨らますコノハと目を細めてそれを見るロー。
目の前に広がる微笑ましい光景にシャチは目尻を下げる。
「キャプテン幸せそう。」
心の中で言ったはずなのに、ぽろっと出てしまった言葉にシャチの背筋が伸びる。
「テメェ、俺を馬鹿にしてんのか。」
もちろん一言一句聞き逃さなかったローはこめかみに青筋を立てている。
「とんでもないッス!あ!コノハ、ごちそうさま!ウマかった!」
これ以上事を広げたくないシャチは、いそいそと食器を片付けると逃げるようにして食堂を出ていく。
ベポとペンギンも食堂を後にするとコノハが再びローを睨みつける。
その後船内にはローを怒るコノハの声が響き渡った。