第9章 あんな所で満足してんじゃねェ
「いいか、まず島から出るとお前が自分で決断したんだ。俺に礼を言う必要はねェ。」
だとしてもコノハが島から出るキッカケを作ってくれたのは、間違いなくローだ。
何度でもお礼を言いたいコノハだが、ここは一歩引いてローの言葉に顔を綻ばす。
「それに、あんな所で満足してんじゃねェ。」
再び口を開いたローはコノハを見下ろす。
「コノハが思ってる以上に世界は広い。…これから色んな景色を見せてやる。」
ローの言葉に胸が熱くなったコノハは体を起こし、ローの首に抱き付く。
「うん。ありがとう。一緒に色んな景色見ようね。」
突然の行動に目を丸くするロー。
髪から漂う石鹸の匂いに目を細めると、愛おしそうにコノハの背中に手を回した。
しばらく無言で抱き合っていると、ローの腕から抜け出したコノハ。
「ね、ねぇ、ロー。」
何か言いたげなコノハは、床に視線を落とす。
「なんだ。」
短く言うと顔を上げるコノハ。
その顔はさっきとは比べものにならないほど赤くなっている。
「朝…言ったこと本当?その…、寝る時は今まで通り一緒に寝るって…。」
確かに朝ローが耳元で囁いた言葉だ。
コノハの部屋を作ってやったは良いものの、寝つきが悪く睡眠の浅いローはもはや彼女なしで寝る事などできない。
「一緒に寝たくないってんなら無理強いはしねェが…。」
不敵な笑みを浮かべたローは、こう言ってしまえばコノハが拒否できない事を知っている。
「わ、私も一緒に寝た…い。」
耳まで赤くしたコノハは恥ずかしいのか再び床に視線を落とす。
想定内のコノハの言葉に口元を吊り上げたローは、その場を立つと細い腕を掴み小さな体を立たせる。
「来い。」
そのまま腕を引くと自室に向かうロー。
意味の分からない行動にコノハは首を傾げた。