第9章 あんな所で満足してんじゃねェ
次の日の朝。
セントポプラを出発し、船を受け取ったハートの海賊団はウォーターセブンの沖合へと船を走らせていた。
新しく生まれ変わった船内を子どものように走り回る4人に、コノハが心配なローはため息を吐きながら後を付いて行く。
「すげー…広くなってる。」
ローとアイスバーグのみで行われた商談の内容を知らないペンギンは、その場で立ち尽くした。
デッキと繋がるリビングは以前よりも随分見通しが良くなっており、その隣にある食堂も5人で使うには勿体無いほどの広さだ。
「でもキャプテン、なんで急に部屋広くしたんスか?」
全員が思っていた事をシャチが代弁すると、椅子に座っていたローが顔を上げる。
「さすがに5人で新世界へは行けねェからな。これから新たなクルーが増えれば、今までの部屋じゃ狭ェだろ。」
常に先を読むローはやっぱり聡明だ。
4人の頭を集めたところで、ローの足元にも及ばないだろう。
椅子から立ち上がったローは、さっきから浮かれ足で目を輝かせているコノハに近寄り手を掴む。
「まだ他にもある。ついてこい。」
そう言うとローは自室の方へと向かい、なぜかクルー達も後をついて行った。
「ここだ。コノハ、開けろ。」
自室の手前の部屋に着くと手を離すロー。
確かここは物置部屋だったはず…。
不思議に思い首を傾げていると、眉間に皺を寄せたローが口を開く。
「開けねェのか。」
その言葉にコノハは首を降り扉に手を掛ける。
扉を開けると目に飛び込んできたのは、予想を遥かに上回る光景だった。
「ロー、これって…。」
今まで物置として使われていたはずの部屋は、見る影もなく生まれ変わっていた。
ベッドに机、棚など必要最低限のものが置かれ、白と茶色で統一された家具は自分が長いこと住んでいた家を思い出させる。
「コノハの部屋だ。好きに使え。」
ローは恥ずかしいのか顔を背けたままそう言った。
「っ、ありがとう…!本当に嬉しい!」
居ても立っても居られなくなったコノハは、思うままにローに抱き付くと、それを見ていたクルー達が空気を読んでその場を立ち去る。
それを視界の隅で確認したローは小さい耳に顔を寄せ、何かを口にする。
「っ!?」
それを聞いたコノハの顔はみるみるうちに赤くなっていった。