第9章 あんな所で満足してんじゃねェ
「ロー、ありがとう!」
嬉しそうに笑うコノハの笑顔につられそうになったローは帽子を深く被り直す。
そんな行動とは裏腹に、ローの頭の中は彼女に何を渡したら喜んでくれるのかと、プレゼントのことで一杯だ。
「実は私、好きな人とプレゼント交換するのが夢だったの!本で恋人同士がプレゼントを交換しあうって読んだ事があるんだけど、そんな人いなかったし家族もいないから、毎年クリスマスにひげじいとプレゼント交換してたの。」
眉尻を下げながら話すコノハにローの胸が締め付けられる。
もしもひげじいがいなかったら、彼女は本当の意味で孤独だっただろう。
それでも今は自分がいる。
間違いなく自分もコノハも孤独ではないのだ。
「…そうか。なら今年からは俺がそれに付き合ってやる。」
そう言うローの耳は赤くなっていて、思わず手を伸ばしてしまう。
「ふふ、照れてる。」
「うるせェ。」
赤くなった耳を掴まれたローはバツが悪そうに自分を見つめる。
その瞳には人のことを言えないほど赤い顔をした自分が映っていて、それを隠すようにローの唇へとキスを落とす。
「ロー、ありがとう。」
唇を離したコノハはそう言うと、再び席に座り直した。
その行動に頭が追いつかず、目を見開いているとコノハが子どものように笑う。
「ふふっ、起きてますか〜?」
手をヒラヒラと振るコノハにローの目元が釣り上がった。
「…テメェ!」
暖かな風が吹くテラス席で、コノハの笑い声が鳴り響く。
偶然街を散策していたクルー達は、そんな2人を見つけると急いで影に隠れた。
「キャプテン、怒ってるのに全然不機嫌じゃねェな〜。」
「間違いなくコノハのおかげだね。」
シャチとベポが話す傍ら、コノハの頸を凝視する者が1名。
「なあなあ、コノハの頸見ろよ!あれ多分本人気付いてないよな?」
どうせまた変な妄想をするんだろうと思っていた2人は、ペンギンの言葉など聞こえていないようで…。
「今度コノハに教えてやるか。」
含んだ笑いをするペンギンを誰も止める事はできない。
後にこのペンギンの言葉が、再びローを怒らすことになる。