第1章 仮面を被った悪魔
「お前は俺のものなの。死ぬまでずっと」
胸ぐらを強く掴まれる。途端に顔が近くなる。雅哉の瞳はどす黒い。このまま目を合わせていると催眠にかかってしまいそうな。
「何言って…………」
すっと胸ぐらから離れる手。反動でベッドに沈み込む。今更気づいたけど服はパジャマに着替えられていて身体もベタベタしていない。全部雅哉がやってくれたの?
「ねえ雅哉」
部屋を出ようとしている雅哉を呼び止めた。
「私、昔みたいに仲良くなりたい。ちゃんと兄妹したい」
「………俺はお前を1度も妹だなんて思ったことは無い。お前は赤の他人だよ」
赤の他人。確かにそうだよ。血、繋がってないもん。でもやっぱり悲しくて、こういう事ばっかりしてきて。たまたま近くにいるのが私だから卑猥な事してくることだってわかってるよ。
私は雅哉の暇つぶしでしかないんでしょ?
普通の兄妹になりたいよ。血が繋がってなくたって、紙切れ一枚だけで家族になったけど。
昔みたいに沢山笑ってよ。
「昔は沢山遊んだじゃん」
「そうだっけ?」
「お風呂だって入った」
「あれは仕方なく」
「妹が出来て嬉しいって言ってたじゃん!」
「社交辞令だよ。このバカ」
そう言い捨てて雅哉は自分の部屋に戻ってしまった。
『1度も妹だなんて思ったことは無い』
その言葉が何度も頭をよぎる。私はお兄ちゃんだってずっと思ってたのに。
大好きだったよ。優しくてかっこよくて。自慢のお兄ちゃんだったよ。
でも今の雅哉は大嫌いだ。