第6章 すれちがい
「うん。いまさっきね」
「そっか。おかえり」
私な方をちらりと見ただけで、直ぐに机に目を戻した。もしかしてバレていない?それともバレてるけど言わないだけなのか。
「お母さんがこれ食べてって。お母さん、心配してたよ」
「ありがとう。お母さんにも伝えといて」
「伝えとくよ。勉強がんばってね」
応援してるけど、内心落ちて欲しいなんて思ってる自分がいる。大学に受かってしまったら、私は一生この人から離れられない。そんなの絶対にいや。
「早織」
「なに?」
ふと名前を呼ばれて、心臓が痛いほどバクバクしてる。清水くんの家に泊まったのがバレている?
「全部見てるから。俺に隠し事はできねえよ」
「は………?なに、それ」
「言っとくなら今のうちじゃない?」
本当に雅哉は知ってるの?バレてたの?全部見てるってなんで。どうやって?
「隠し事なんてしてないよ」
私は思わず慌てて部屋を出てしまった。動揺を隠しきれない。余計な怪しまれたと思う。全てが終わったと思った。