第4章 刻まれた呪い
「約束だからね。おやすみ」
そう言って雅哉は自分の部屋に戻って行った。
***
学校が始まって、早速進路について動き出す。志望理由書を書いたり推薦を貰ったり。
私は何とかして指定校推薦を貰うことが出来た。とは言っても私しか条件を満たしてる人がいなかったってだけ。他にいたら貰えなかったと思う。
推薦も貰って、願書もだして今さら後戻りはできない。雅哉も順調に受験の準備をしているみたいだった。
___その二ヶ月後、私は受験を迎えた。
私はと言うと面接と小論文だけ。指定校推薦だしほぼ確で受かると言われている。
その一週間後には合格発表があって、私は受かってしまった。嬉しいはずなのに目の前が真っ暗になった気がした。
私は短期大学で雅哉は大学。だから受験はもっと先らしい。毎日のように机に向かって勉強してる。それを見て少しほっとしている
自分がいた。
「受験、受かったらしいじゃん。おめでとう」
そのおめでとうにはどんな意味が込められているのか考えたくもない。多分純粋に喜んでいないし思ってもない。
「雅哉は受かりそうなの?」
「うん。余裕だって先生に言われた」
なんで兄妹なのにこんな違うんだろう。結局血は繋がってないから赤の他人だからだと思うけど。
「よかったね」
「うん。これでやっと……………」
「雅哉?」
何か言っていたけど、最後の方は聞き取れなかった。
「なんでもない、俺は勉強してくるから。おやすみ」
「おやすみなさい」
広いリビングに私1人残される。テレビから流れているドラマの内容なんか一切頭に入ってこない。
これから先私は雅哉と一緒に生きてくのだろうか。就職もあるし、結婚だってあるかもしれない。雅哉が別の人と付き合って結婚して…………?
なぜだか胸がモヤモヤした。いやだ、雅哉は、まさやは……。
「ほんと何考えてんだろ。私」
もう十分と言っていいほど雅哉に思考を操られてる。今までずっと知らないフリをしていただけなのかもしれないけど。
このままじゃ本当にすべて塗り替えられてしまう。なんとしてでも自我を保たなきゃ。