第4章 刻まれた呪い
夏休みなんかとっくに最終日を迎えてしまった。今年の夏もどこにも行けなかった。高校生活最後の夏休みだったのに。
進路のことは全部雅哉に決められた。正直行きたいところがなかったからなんとも思わない。………ひとつの条件を除いて。
「雅哉、ほんとに一緒に住むつもりなの?」
「当たり前でしょ。お母さんもお父さんも承諾してくれたし。なんの問題もない」
問題しかないよ。お母さんたちはそれが安心ってむしろ喜んでて、ちょっとでも否定してくれるかなって期待したのに意味はなかった。
雅哉は満足気に笑った。私はなにもかも雅哉の言いなりになってまう。断れる理由なんてひとつもないんだ。そうやってじっくり私の自由を奪っていく。でもそれは雅哉と一緒にいたらの話。だったら…………。
「そうでしょ?__今さら志望校変えるとか馬鹿な考えはやめて」
言い当てられて思わず肩が跳ねる。勝手に県内の学校に変えちゃえって思ってたのに。そうしたら雅哉と離れられるって。酷いことされなくて済むのに。
「図星じゃん。そんなことしたら早織のこと、家から意地でも引っ張りだして監禁して、その後は毎日犯してあげる。絶対に外になんて出してやらない。最悪早織のこと殺しちゃうかも」
俺を裏切ったらの話だよ?と耳元で囁いた。雅哉ならやりかねない。だっていつも逆らったら酷いことされるから。それがいつエスカレートするかなんてわからない。
「そんなこと、するわけないじゃん」
「ふーん?」
咄嗟に出た言葉、完全に自己防衛から出た言葉だった。まだ胸はバクバクしてて痛い。