第4章 刻まれた呪い
「なあ、高校卒業したら2人で暮らそう」
「何言ってるの?」
突然そんなことを言い出す。
「2人ならさ、お母さんもお父さんもいない。いつでも早織のこと抱けるんだよ」
抱けるって言葉に身体が熱くなった。昨日の出来事が鮮明に蘇ってくる。
「早織だって好きでしょ。俺とするの」
「ちがう、」
「学校でもやらしいこと考えてたんでしょ。今日だってお仕置きされちゃうって期待してたんじゃないの?」
図星だ。目が覚めたのにそんなことを言い出すから、またショーツが濡れる。
「2人っきりならさ、好きなだけ抱いてあげるよ」
耳元で毒を注ぎ込むように囁く。身体が動かなくなってしまう。良いかもって一瞬思った自分がこわい。
「悪い話じゃないでしょ。家賃だって折半すればいい」
たしかに。家賃を2人で払うってなるとお互いの負担も少なくなる。正直いいかもしれない。
「考えとく」
将来なんて保証できない。私が志望校に受からなかったり、上手く就職できない可能性だってある。そしたら私は一人で生きていけない。
もし雅哉が結婚したらわたしはどうすればいいの。
「早くお母さんたちに伝えなきゃ。2人とも進路、結構心配してるみたいだし」
雅哉は志望校が決まっているけど、当の私は一切決まってない。将来の夢だってあやふやで何を学べばいいのかすらわからない。
お母さんたちがいるときは決まって進路の話がでてくる。早く決めなきゃ行けないことは分かってるけど実感がわかない。
「進路か……………」
「俺が行きたい大学と近い所にして」
「まだ一緒に住むって決まったわけじゃないのに?」
確信したような笑みを浮かべる雅哉。少し不気味だった。
「俺も探してあげるから。その中から選んで」
「………分かった。そうするから」
ここで否定したらだめな気がした。この判断も絶対に良くない事ってことはわかってるのに。
「早織は物分りがいいね。夏休みが終わるまでに決めよう?」
「うん」
こうしてまた雅哉に縛られていく。少しづつ自由が奪われていく。