第1章 仮面を被った悪魔
そう言い放って彼はまた歩き出す。
でも私の足は上手く動かない。零れそうになる涙を唇を噛んで耐える。それに気づいた雅哉はまた、私の方を見る。
「何つったってんの」
「………………」
「また俺を怒らせるの?」
その目には光がない。漆黒に囚われた瞳が私に向けられる。
雅哉は舌打ちをして私のところまで来た。そして、さっきみたいに手首を掴んで歩き出す。
家に着いて、扉の鍵が閉められた。少しは離れた手も、また手首にかけられる。靴もろくに揃えないまま、ある部屋へと連れていかれる。
「待って、どこ行くの」
「俺の部屋に決まってんだろ」
「や、やだ………!」
男の力には到底敵わない。無力さを痛いほど知る。また悲しくなって涙が出そうになる。私はただ引っ張られるだけ。
部屋に着くなり唇を塞がれる。こんなのおかしい。私たちは仮にも"兄妹"なのに。みんなにバレたら私たち……………。
「んっぅ、……やめっ………」
「だまれ」
角度を変えて執拗に唇を貪る。短い息が漏れる。胸も、息も、全部が痛いくらい苦しい。気づいたら視界が涙で滲んでいた。
「お前は俺のものって何回言ったら分かるの?」
「私は雅哉のものじゃないっ、もん」
「お前今日おかしくね?いつも従順な癖に」
雅哉は私をベッドに押し倒した。せめてもの抵抗で私は雅哉を睨みつけた。
「俺以外に笑いかけるな。その苦しんだ顔も、泣いてる顔も全部俺以外の奴の前で晒すんじゃねえ」
「何言って………………」
「うざいんだよお前」
制服のリボンがするりと外される。上から1つづつボタンが外されていく。