第5章 恋人 - 定義と認識 2*
ジムからは浴室へ直行出来るらしい。
カポ──────ン……
「あそこは静さんが一人で使ってるんですか? あ、ちゃんと向こう向いてて下さい」
「俺は主に朝にやるかな。 集中力があがるから。 うちの手伝いの………従業員も利用しているが、キミもいつでも使うといい。 それにしても、湯舟にタオルを持ち込むなんて無粋な真似はどうかと思うがね」
外湯には風情のある岩組みの露天風呂────当然のように一緒に湯船に入ろうと譲らない静に対して、体を隠してなら。 という条件で了承した。
ザワザワと葉擦れの音が聴こえる。
この辺りは落ち着いた住宅地が多く、都内とは思えない静けさだ。
大きなお風呂なんていつぶりだろう。 思いがけず贅沢な午後にうっとりと目を閉じる。
「あのクローゼットの中身はどうする? 部屋を使うのなら、処分した方がいいな」
浴槽から肩と腕を出し、へりにもたれリラックスしきっていた透子が振り向いた。
「それなんですが、良ければ使わせていただけますか。 似合うかどうかは分かりませんが……」
対角線上にお湯に浸かっていた静が眉をあげる。
ちなみに彼の腰にもタオルを巻いてもらった。
目のやり場がないから、という理由で。
「心境の変化か?」
認識の違いは数あれど、静の気持ちや青木の気遣いを無下にする理由が、今の透子には思い付かなかった。
「柔軟に考えることにしました。 テーブルマナーも出来ないよりは、出来た方がいいですから、勉強します」
「フン………それは大変結構」
意味ありげに口の端をあげる静だった。
透子が怪訝そうに訊いた。
「なんですか?」