第18章 死がふたりを分かつとも
西条と三田村がどうやって一緒になったのか。
美和がどうして子をもうけたのか。
桜木がなぜ独身を貫いたのか。
機会があれば………と毎年透子は思うも、京吾は果たして聞きたいだろうか?
「透子、どうした? ホテルに着いてから上の空だ」
後にシャワーを浴びた静が座っていた透子の体に腕を回す。
「うーん? 毎年言おうと迷ってるのですけど、たぶん、八神さんはすべて知っているような気がするんですよね」
「………なんの話かよくは分からないが。 知っていることと話すことは別だ。 なぜならば言葉は意思や生の証なのだから。 死者に実を持たせようとする意義は単にキミの真心、かな?」
うなじを舌で舐めあげられた透子は甘い声をあげた。
「あ…そう、かも……知れません」
「………ありがとう」
今宵も二人は深く溶け合う。
空が暁を迎えるまで。
琥珀の輝きは太陽のように眩しく周囲を照らし、瑠璃の深い闇は夜空のごとく優しく包む。
過ぐ日々の中で
語り
笑い
涙し
怒り
慈しみ
愛し
そんな時に静はいつも透子に囁きかける。
「何度でも言おう。 俺はキミを愛している」
[完]