第5章 恋人 - 定義と認識 2*
「………知っている」
静が口元に拳をあて、無理矢理と平常に戻そうしていた。
そんな彼にあ然とする。
「わ、私の交友関係まで?」
「中学の時に二回、高校の時に四回。 告白はされたがキミはいずれも断った。 ………気に入らないが、先方の見る目は評そう。 しかしキミは、肝心の恋した相手には告白はしなかった。 俺は今、その理由が気になっている」
頬に指を添わせどこか遠い目で記憶を辿る静に、薄ら寒いものを感じた。
「………私もそんなの、覚えてません。 静さんって、怖いしかないんですけど」
「だが、倫理観念からにしろ何にしろ。 キミは俺を受け入れた。 使えるものは使う。 全力でつけ込むと言っただろう」
ベンチのシートに腕を回し、静が無邪気ににっこり微笑む。
「なんでそんなに………私を?」
「屋外でピロートークを?」
三度赤くなる透子に静が体を寄せた。
その額に、静が口をつけ視線を絡ませる。
白い肌を少しばかり紅潮させ、なにか抑えるように僅かに眉を寄せる。
こんな時の彼は────危ない。
そう思い、ベンチの端に寄り静と距離をとる。
「知りたいのなら、このままベッドに」
「いえやっぱり結構です」
言ったなりの自分の腰と足を支えた静が立ち上がった。
突然視界が高くなり、透子が狼狽えた声を出す。
「………は、離してください!!」
「それ以上、人の頭を揺するのはやめたまえ。 殴られた時も思ったが、高校二年時のキミの握力は42キロ。 ちょっとした成人男性並だ。 見た目は子猫か子犬みたいに愛らしいが」