• テキストサイズ

琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第5章 恋人 - 定義と認識 2*



結局、彼を見返しながらもしぶしぶと元のベンチに腰をかけた。

「………恋人にプレゼントを贈るのは、そんなにおかしなことかね」

青木が座っていた場所に、今度は静が腰をおろす。
透子は黙っていた。

「店頭で見かけて、キミに似合うと思った。 二、三日考えて、結局俺はそれを買った。 いつかキミが俺の恋人になってくれたら贈ろうと」

「………」

「………すぐに買わなかったのは、そんな日が来るなんて思えなかったからだ。 贈れない物を傍において、埃を被っていくさまを見るのは、なかなかに辛いから」

前を向いて足を組み、淡々と静が話してくる内容が意外すぎた。

「それは………でも」

「そんな時にキミは、至極冷静に関係性の定義がどうだとかを考えていた訳だ。 身勝手だが、車内でも今も、俺は結構傷付いていたらしい」

謝ることなのかは分からない。

「ご、ごめんなさい………」

それでも、自分は相手の純粋な好意を踏みにじったらしい。 それぐらいは理解出来る。

「キミは根っから生真面目なんだろう。 早々に手を出したのはこちらだ。 謝ることは無い、が。 やすやすと相手に気を持たせるのはやめた方がいい。 泣く男が増える」

横を向いた静が笑いかけてくる。
それがどこか寂しげで、胸が痛んだ。



/ 457ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp