第5章 恋人 - 定義と認識 2*
「うむ。 なら良い」偉そうに頷いた静がクローゼットを開き、ウォークインのそこには服やら靴やバッグやらがビッシリと並んでいた。
「え、ええと? なんですか…これは」
「先ほど言わなかったか。 好きに使え」
「もしかして、国立から運んでたのは………?」
「よく分かったな。 サイズは間違いないと思うが」
だから何で他人の服や足のサイズを。
それは置いといても。 今度は自分がため息をつく番だった。
「要りません。 私、自分の物ぐらい持ってます」
「ここでみずぼらしい格好でいるつもりか」
何の気なしに口にした様子の静だったが、透子を振り向き目をそばめる。
「………気分を害しているのか?」
「こんな不分相応なものは必要ないと言ってます」
「? だから気にすることは」どうしたのかと透子の顔を覗き込もうとする静を避け、「お庭を散歩してきて良いですか」
そうひと言残し、部屋を出た。