第5章 恋人 - 定義と認識 2*
透明に並んでるこれはダイヤモンドかなにかだろうか。 全く価値が分からない。
気が引けるのを通り越し、いっそ具合まで悪くなりそうな気分で、静に手を引かれるまま、二階へと向かった。
「ここはクローゼットルームだが。 掛かっている服などはキミ専用のものを用意した。 パウダールームとして使っていい」
案内されたのは、静とは別の部屋。
十畳ほどの広さだろうか。
丸い低めの天井で、備え付けのクローゼットがある室内には鏡やデスクが配置してある。
なんとなく、落ち着く。
「静さん。 私、このお部屋をお借りしても良いですか?」
「先ほど言わなかったか? キミは俺の部屋に………ん? なぜリングを右手に付け替え」
「ま、まあ。 それは気にせずに」気分を害してムッとしかける静をなだめて言う。
「仕事や勉強をするときは集中したいですから。 ここは安心します」
「こんな粗末な部屋がか?」
どこか不満げな静だったが、「お願いします」と頭を下げる透子にため息をつく。
「集中出来ると言うなら仕方がない。 だが、寝室は俺の部屋だぞ」
「………」
出来ればそれも一人でゆっくりと。
「でないと駄目だ。 返事は」
「………はい」
なんて、そこは絶対この人譲らなそう。
仕方なしに妥協した。