• テキストサイズ

琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第5章 恋人 - 定義と認識 2*




「透子、聞いてるのか」

「えっ? ………いえ」

こちらを伺ってくる静の視線に「すみません」と謝った。
半ば呆れたように見てくる静に萎縮した。

「………キミは、すぐに謝るんだな」

「聞いていなかったのは確かですから…少し、考えごとをしていて」

「いつもなら、静さんが謝らなさ過ぎなんです。 などと、言われそうなものだが」

なにか思い出したのか静が、ふ、と窓の外に目を移す。

「キミはよく謝るし、礼を言う。 日本人の中でも特に。 そういうのも、キミの親の教育かね」

「そうですね………施設でもそうでしたし、母からも。 ただ、母の場合はそれだけではなく、逆に礼や謝罪もきちんと受けるべきだと」

「ほう? そんな要求は初めて聞いた。 そんなものについては、相手の自由では?」

静の指摘に、彼の後ろに目線を投げながら話す。

「確かに一般的じゃないかも知れませんけど。 元は一期一会の考えです。 その人とは明日に会えるか、またいつ会えるか分からない。 相手に借りを作ったと思わせたままは良くない、と。 相手に良いと思うことをしたら、都度きちんと見返りを貰いなさい。 そう言っていました」

「なるほど。 一期一会とはたしか茶道の精神だな。 英語圏で言う、Thank you for はただのビジネス上のマナーであって、決して礼などではない。 だから最初に俺の態度が原因で、キミに嫌われたという訳か」

そう言われ、少し顔を赤くした。



/ 457ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp